本来、さまざまなウイルスは、人間のなにかの細胞に寄生して増殖します。専門的になりますが、新型コロナウイルスの場合、ACE2受容体(アンギオテンシン2受容体)を持つ細胞に感染することが報告されています。新型コロナウイルスが、Ⅱ型肺胞上皮に存在するACE2受容体に結合し感染、増殖することで生命を脅かすウイルス性肺炎を発症すると推測されています。
そのACE2受容体は、体内のあらゆる箇所に存在しますが、口腔内粘膜にも多く存在すると報告されています。味覚障害は、舌の上に多く分布する味蕾細胞が新型コロナウイルスの感染によって破壊されておこるのだと推測されます。特に暴露が少ない場合、または極めて初期の場合、鼻腔や口腔だけが感染している可能性も十分に考えられます。
すなわち、発熱や咳や呼吸困難がなく、味覚障害だけが出現しているのは、暴露が少ない場合や、極めて初期の場合で鼻腔や、口腔だけが感染している症例と推察されます。この段階でも他人に感染させる可能性があることは疑いようがありません。本人も、感染が時間とともに咽頭・喉頭そして特に広がる可能性が当然ありえます。味覚障害は新型コロナウイルス感染の自覚症状の重要な一つのシグナルだと認識してください。