高尾こんの歯科医院のつくりかた

設計 : 一級建築士事務所 TAKAOスタジオ
施 工  : ワンハーフ

TAKAOスタジオのページでも当院の設計が紹介されています。
 大変わかりやすく説明いただいております。そちらもぜひ御覧ください。)

1.大切にしたこと

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①自然素材を用いること

室内の木の香りと自然素材のやさしい雰囲気によって、緊張する歯科治療の時間をリラックスする時間と感じていただけるように、壁や床に無垢の木や、漆喰(生石灰クリーム)、リノリウム等を用いました。

キッズコーナー
②子供連れでも安心して診療が 受けられる設備があること

小さなお子さんがいる患者様も気兼ねなくご来院いただけるように、トイレにはおむつ替え台、ベビーチェアを設置し、キッズスペースがある治療室もご用意しました。

断熱材吹付
③暑すぎず寒すぎない 心地の良い温熱環境を提供すること

断熱材を用いて建物の断熱性能を向上させ、エアコンの効きをよくしました。また熱交換型換気システムを導入し、一年中快適に換気が行えるようにしています。

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④シックハウス対策を行うこと

建材に含まれる化学物質の影響から体調を崩すことがないように、建材の選択には配慮をしました。

2. 自然素材

自然素材の良さは、温かみがあること、穏やかな調湿性能をもち、空間がなんとなくしっとりすること、化学物質由来の室内空気汚染への心配が少ないことなどがあります。

また、時と共に、キズができたりへこみができたり、色合いが変わったりするそんな自然な変化を楽しむこともできます。そして呼吸をしているような、自然素材に囲まれた空間に身をおくことは、とても心地よいものです。

化学物質を用いて耐久性を追求した素材とは異なり、使い込むほどに風合いが増してきます。手入れは少し手間かもしれませんが、そこを楽しんでいただければと思います。ここで働く方にも患者さんにも、そんな空間を満喫頂けると良いなと考えています。

採用した自然素材は次のものになります。

①生石灰クリーム(タナクリーム/田中石灰工業)

診察室、待合室の壁は生石灰クリーム(きせっかいくりーむ)を塗っています。
生石灰クリームは、漆喰と同様に石灰岩という同じ原料からできています。
この石灰岩を焼いて、大量の水を加えてペースト状にしたものです。
水だけでペースト状になり塗ることができるため、接着剤などを入れる必要がなく、素材がシンプルです。
田中石灰工業は漆喰の特長として次のことを紹介しています。生石灰クリームも同様の特長があると考えられます。

  • 漆喰は湿度を調整し、結露から来るカビやダニを防止します。
  • 漆喰には悪臭やホルムアルデヒドなどのVOCを吸着する機能があります。
  • 漆喰は静電気を発生させず、ビニールクロスよりもはるかに汚れにくいです。
  • 漆喰には有害な物質が含まれておらず、廃棄されても環境に優しい素材です。
  • 漆喰はそのアルカリ性で、抗菌作用が長時間持続します。
タナクリーム(田中石灰工業)
タナクリームを塗っているところ

②リノリウム(マーモリウム/田島ルーフィング)
診察室、トイレ、倉庫の床はリノリウムを張っています。
リノリウムは一見するとビニル床材のようにも見えますが、亜麻仁油、ロジン(松脂)、木粉、石灰石、天然色素、ジュートといった、自然素材から作られています。

施工しているところ
完成

亜麻仁油が酸化する過程で4つの効果があることが実証されています。

  • 抗ウィルス効果(不活性化)99.9%以上
    ウイルス試験において、ノロウイルス*1/A型インフルエンザに対して抗ウイルス効果があることが実証されました。(*1:代替ウィルスとしてネコカリシウィルスで実施)
  • 抗菌効果(不活性化)99.9%以上
    主に食中毒などの原因となる菌に対して抗菌効果があることが実証されました。
  • 脱臭効果
    空気中のアンモニア臭を脱臭する効果があることが実証されました。
  • 抗アレルギー効果
    アレルゲン(ハウスダスト)を簡単に取り除くことができます。

(出典:田島ルーフィングHP)

③無垢材(ホワイトアッシュ、ブラウンアスペン、米杉/前田木材)
待合室の床や壁には無垢材が張られています。床はホワイトアッシュ(トネリコの仲間)、室内の壁はブラウンアスペン(ポプラの仲間)という無垢板です。外壁の一部は米杉の羽目板を用いています。

無垢材は、調湿効果があり、室内の湿度が高い時は吸ってくれ、低くなると吐き出してくれます。また自然素材ならではのばらつきがあり、色合いや木目が均質ではない心地よさがあります。

ホワイトアッシュ
ブラウンアスペン
米杉

④自然塗料(ジャパンオイルワックス、天然オイルステン/AURO)

木部の塗装は自然塗料を用いています。床や壁の色を付けない木部は水性のオイルワックス、外部や木製建具は色をつけ、油性のオイルステンを用いました。

塗料は、亜麻仁油、ヒマシ油、ひまわり油、ロジンエステル型界面活性剤、桐油、ダマール(天然樹脂)、蜜蝋、オレンジ油、ユーカリ油、ローズマリー油など自然素材からできています。

ジャパンワックス
塗装しているところ

製造元はAURO社というドイツの会社で、サスティナビリティ(持続可能性)を追及しています。

サスティナビリティとは、図のように「植物」→「原料化」→「製品化」→「販売・使用」→「微生物による分解(堆肥化)」→「植物」のサイクルを永続的に維持することです。これはAURO製品が使用後に廃棄されても人や環境が汚染されないことを意味します。

(出典:AURO社HP)

⑤天然素材のカーテン(リネンカーテン/リフリン)

窓辺にかけるカーテンと、ユニットを仕切る間仕切りはリネン100%をベース素材に使用した布を用いました。(消防の関係で防炎加工を施しています。)
リネンとはフラックスと呼ばれる植物の茎を原料とする麻の種類のひとつです。

リネンはやわらかくなめらかです。ほどよいしわ加減も風合いのひとつ。また天然素材リネンはお部屋の湿気を吸ったり吐いたり無垢の木と同じく呼吸しています。湿度が高いときは繊維に湿気を含み湿度が低いときは吐き出す。リネンが伸びたり縮んだりするのも呼吸をしているからです。(出典:リフリンHP)

間仕切り
カーテン

3. 空調と換気

①断熱材の施工

ピンク色の部分が吹き付けた断熱材

建物の断熱性能を高めることは、エアコンの効きをよくし、暖冷房に必要なエネルギーを減らせ、電気使用量を抑えることにつながります。
また断熱性能の低い空間では床面と天井面の温度差が大きく、不快感がありますが、断熱性能を良くすることで上下の温度差が少なくなり、快適になります。
断熱性能を高めるために、外壁側の壁に断熱材を施工しました。北側と南側の外壁に面した部分は、断熱材を吹き付け、東側に新たに設けた外壁ではボードタイプの断熱材を施工しています。

②木製サッシ

木製のサッシペアガラス

建物の断熱性能を高めるためには、窓の性能も大切です。
東側は、断熱性能の高い木製のサッシのペアガラス仕様としています。

熱交換型換気扇
室内の空気を清浄に保つためには換気が必要です。換気のために熱交換型換気機器(ロスナイ/三菱電機)を設置しています。
熱交換とは、熱交換器により、換気の際に捨てられてしまう室内の暖かさや涼しさを再利用(熱回収)しながら換気します。約5~8割の熱エネルギーを回収でき、夏期・冬期の冷暖房負荷を低減し、省エネ換気が可能です。

熱交換することで、冬、外気を取り入れると寒くてたまらない、とか、夏の熱い外気がそのまま入ってきて不快ということがなく、快適です。

ただ、熱交換にはそれなりにエネルギーがかかります(電気代が高くなる)ので、外気温が快適な春や秋は、熱交換することなく外気をそのまま取り入れるモードを活用してください。(自動換気)

熱交換換気システムがカバーしているエリアは、主に待合室、カウンセリングルーム、診療室です。換気のルートを簡単にご説明します。

新鮮な空気をエントランス付近から取り込みます。

新鮮空気の取り入れ口

カウンセリングルームと待合室の天井に設置されたフィルター付きの給気口から新鮮な空気を供給します。

待合室
カウンセリングルーム

汚れた空気は消毒コーナーと技工コーナーの天井から排出します。

消毒コーナー
技工コーナー

空気の取入れも空気の排出も機械によって行っています。
この他、トイレと機械室は、新鮮空気の取入れは自然に行い、汚れた空気の排出は、換気扇を用いて行っています。

トイレの換気扇

4. シックハウス対策

建材や家具などから発生する化学物質、カビ・ダニなどによる室内空気汚染等とそれによる健康影響が指摘され「シックハウス症候群」と呼ばれています。
化学物質などが人に与える影響は個人差が大きく、同じ部屋にいるのにまったく影響を受けない人もいれば、敏感に反応してしまう人もいます。この問題はまだ解明されていない部分も多く、誰もが絶対大丈夫という対策はありませんが、ここでは可能な限りの対策を講じています。
厚生労働省ではシックハウス問題に対応するために、13の化学物質について室内濃度指針値を定めています。そこで、室内空気質への配慮のために、これら13物質を含まない建材や施工材料を選んでいます。
化学物質は多岐に渡り、全く含まないということは難しいことです。そこで、換気機器を設置し室内空気を清浄に保つように換気を行うようにします。
材料の選択と換気の励行によってシックハウス対策を行っています。

※シックハウス症候群(出典:厚生労働省HP)
近年、住宅の高気密化などが進むに従って、建材等から発生する化学物質などによる室内空気汚染等と、それによる健康影響が指摘され、「シックハウス症候群」と呼ばれています。その症状は、目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹など人によってさまざまです。

5. その他

その他、気持ちよく使っていただくために、衛生面の取り組みを行っています。

1. 紫外線による殺菌
スリッパを収納している棚に、紫外線殺菌灯を設置して殺菌しています。
扉を開けると殺菌灯は消灯します。扉を閉めると殺菌灯は点灯して消毒しています。殺菌灯を直接見ることはないように配慮しています。

白い幅広の部分の裏側に殺菌灯が入っています。

2. 便器の除菌機能、掃除のしやすさ
便器は「除菌」できる水を自動で吹き付けています。掃除のしやすい工夫があります。